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「俺達も竹刀を持って闘えばルールは同じ。つまり剣道よりのルールって事になる。だけど合氣道で闘う場合は、相手が床をタップしてギブアップするか、竹刀を相手から奪えたら俺達の勝ち。延長戦は無しだ」
「俺達のほうがかなり不利な条件じゃないか」
マサルが憤りを見せた。
「仕方ないさ。相手は剣道、武器持って当然だ。相手に合氣道で勝負しろとは言えない。こっちはそれを承知で受けたんだからな」
「ゴメン」
「長尾が謝ることじゃねぇ。俺が長尾でもあの状況じゃ試合を受けたさ」
「相手の順番は?」
「ああ、一之瀬の言った通り先鋒、次鋒が女子で中堅以降が三羽ガラスのやつらだ」
「やっぱり」
「いいか、あいつらはなんだかんだ言ったって俺達をなめている。そこに機先を制する隙が出来る。まずはそこを狙うんだ」
力強く頷く俺達。
「無駄な作戦会議でもしてるのか?」
その声に振り向くと、面以外のフル装備をした三羽ガラスがそばに来ていた。
「お前らこそ少しは作戦会議でもしたらどうなんだ?」
「言うねぇ~茶髪く~ん。ま~だそんな元気があるなんて――」
「貞二!」
何か言いかけた小山田を片倉が制する。
コイツらこの前から一体……。
何か隠してでもいるのか?
「ふっ、お前らなんか、俺一人でも本当は充分なんだがな」
「今の言葉本当じゃろうな」
「な、ジジィどこから……」
話していた楯岡の後ろからいつ来たのか、虎蔵じいさんが顔を出した。
「どうなんじゃ? 今の言葉に二言(にごん)はないのか?」
「あ、当たり前だ。俺達は都内最強の三羽ガラスだ。竹刀を持って負ける訳がない」
「そうか。ならば勝ち抜き戦と行こうではないか」
「勝ち抜き戦? あの一人で何人も倒して、最終的に大将を倒したら勝ちになるやつか?」
「そうじゃ」
「ほう、面白い。いいだろう」
片倉が落ち着いた声で答えた。
「でもよ~、俺らの内の誰かが出れば一人で終わらしちまう。それじゃあ面白くないから、ちゃ~んと先に女子部員から出してやるから安心しな」
小山田も俺達をバカにするくらい余裕なようだ。
「せいぜい無駄なあがきをしてみるんだな」
片倉の捨て台詞を後に、三羽ガラスは向かいにある自分達の陣地に戻って行った。
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