結末から始まる物語

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そのためには、多少の犠牲は、しかたない。 庶民が、どう思おうと、知ったこっちゃない。 違反キップを切られたドライバーは、たいてい、「弱い者イジメ」と、ののしったが。 そんなのは負け犬の遠ぼえだ。 がむしゃらに職務をまっとうした。 運転技術も、ずばぬけて、すぐれていた。 三年後、宙王は念願の白バイ隊員になった。 今、こうして、以前の受け持ち地区に来ると、夢をかなえた自分を誇らしく感じる。 鼻が高い。 あのころの同僚たちなんて、足元にもおよばない。 しばらく進むと、カーブにかかった。 大きなカーブだ。カーブが終わったところで、すぐに細い道と交差する。 ここはカーブ側からの見通しが、とても悪い。 直前まで近づかないと、細い脇道に車が停まっていても気づけない。 しかも、道の手前に大きな木が植わっているのだ。 木のかげから、やっと脇道が見えた。 脇道に白い軽自動車がいたので、おどろいた。 この道は、あいかわらず危険だ。 軽は、そのまま、宙王の前に出てきた。 もちろん、じゅうぶん、距離はあった。 しかし、よくも白バイの前に出てきやがったな、たいした度胸だーーと、宙王は思う。 これは一時停止違反だな。     
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