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「…実はさ」
少し間を置いて課長が発する。
課長の顔を見ると、目線は向かいのホームに向けられており、気のせいか頬が紅潮しているように伺える。
「高橋さんがうちの部署に来てから高橋さんのこと、ずっと気になっていたんだよね」
思いも寄らない言葉に私は硬直してしまう。
それはどういう意味なのか、聞きたくても自分からは聞けない。
黙り込んでいると、タイミングが良いのか悪いのか、電車が来るアナウンスが流れる。
「高橋さん、可愛いわ」
アナウンスと被るように課長は言葉を続けた。
まるで独り言のように、小さな声でポツリと。
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