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「急にごめんなさいね、吃驚させちゃった?」
人気の無い場所に来たところでやっと課長は振り向いた。
同時にするりと腕は抜け、私の片腕は解放される。
少し物悲しいが、掴まれていた所は未だに熱を持ったまま。
「どうしたんですか、今日の課長、変ですよ?」
バッグを持ち直し、課長の顔を覗き込むように見上げる。
「変?そうね、変だとしたらそうさせているのは高橋さんよ」
色を正したまま、真っ直ぐに私を見てくる課長。
冗談を言っているようには到底見えない。
「私…ですか?」
「本当、鈍いんだから。まあいいわ。これから一緒に夕飯でも食べに行きましょう。この先に美味しいフレンチがあるの」
「いいですけど…って、え?フレンチ!?私今日そんなに持ち合わせていませんよ!」
流石課長と言おうか、お店のチョイスまでお洒落だ。
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