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「糸!!海、行こう!」
突然、りんちゃんこと、鍋 玲果(なべ りんご)が言いました。
いや、りんちゃんはいつも突然なんですが…
午前の授業終わり、昼休み開始のチャイムが鳴り終わってすぐです。
渡瀬調理専門学校の外は、蝉が鳴き喚く、雲一つない晴天でした。確かに海日和ではあります。
りんちゃんは、ゆるくパーマをかけた長い黒髪を揺らし、高いヒールをカツカツ言わせながら、真っ直ぐ講義室を突っ切って私の前に来ました。
『変わった名前で凄ぇ色っぽい美人の1年』で有名なりんちゃんです。
みんなの視線を一身に集めます。
でも、そんなの気にしないところがりんちゃんの格好良いところでした。
「りんちゃん…また突然だね。元麿くんと行かないの?」
海だって、水着姿見てぇな、とざわつく周りの男子を気にせず、私は聞きました。
りんちゃんには高1から付き合っている彼氏がいます。
似鳥 元麿(にとり もとまろ)くん。
化学教師になりたいと、違う大学に通っています。
私も何度か会いましたが、口は悪いけど優しく面倒見の良い近所のお兄ちゃん、って感じの人です。
黒縁メガネで高身長のせいか、確かに化学教師似合いそう、と思いました。
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