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「ごっ、ごめん、ひかるっ、……光の方が辛いのに……私が泣いたら……。ご、ごめん……ひかる……」
ダメだ。涙腺も、精神も決壊した。
光を抱きしめ返して、その震える肩に顔を埋めた。
「くそっ、くやしいよ。ひかる……、ひかる……」
こんな理不尽なことってない! こんなことって、ない……。
「中山さんが落ち着くまで……、少し休憩にしましょうか……」
音無さんが静かにそう言って、私は光と共に部屋の隅に置いてあった長い椅子に並んで座った。
「ひ、ひかる、ごめん……」
光は首を振りながら、ハンカチを握り締めて震えている私の拳に手を添えた。
光の涙は静かだった。
涙だけがとめどなく頬からあごを伝わり、音も無く胸元を濡らしていた。
そして私の視線で自身の涙に気がつくと、ゆっくりとした動作で手のひらを頬にあてて拭った。
「そっか……。そういうこと、か……」
また一つ。……光は何かを諦めた、という顔をした。
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