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「この事件は、最初はロサンゼルスのローカルニュースから。
それが少しずつ広まって、ついには全国放送でテレビ放映されたらしい。
母親の美談として話題になったそうだよ。
全米中から励ましの手紙と、残された子供への支援として多額の寄付が寄せられた。その額55万ドル。
さらに、世論の圧力によって、病院も過失を認めたんだ。
聖子さんの希望した精子は、病院側の手違いによって提供されなかった、と発表し、病院からは示談金として、慰謝料と見舞金が支払われた。その額5万ドル。
これらを合わせると合計60万ドル。そして最初に説明した生命保険金と合わせると、約80万ドルが光の親権者に渡ることになった」
ここまで、いいですか? そう言って、音無さんは私達を見渡し、確認を取った。
「まだあるのか?」
思わず、という感じで師範が声を上げた。
「公の書類は、これで終了です。
残された諸々の書類も、これに付随したものです。
ですが、――ここからは、私が宝田家の顧問弁護士として、沢村弁護士から口頭で引きついだ事柄を説明いたします。
ここから先は、光を引き取った後の、宝田文照氏に関わることです。
光……大丈夫か?」
光は青い顔をして頷いた。
泉さんが光の手を握り直し、指を絡めてる。
いわゆる“恋人つなぎ”になって、光は顔を上げて少し赤くなった。
はっ、こんな時じゃなきゃ、一言言っているとこだけど……、今は、グッ・ジョブってことで、見てみぬふりをしておくか……。
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