☆彡 パンドラ後半

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「宝田文照氏は、当然娘の死を嘆き、犯人を憎んだ。  しかし、この死は『普通の死』じゃなかった。  光の親権者は、生命保険金として20万ドル、寄付金や何やらで60万ドル、合計で約80万ドルを受け取る権利がある、とこの事件を担当した弁護士から聞かされたんだ。  当時、宝田貿易会社は赤字でね、かなりの経営難だったんだ。  会社を畳むにしても、従業員の退職金さえ、用意できるかどうか……、という状況だった。それで……」 「お金、ですか……」  光がポツリとこぼした。 「否定はできない。80万ドルというお金のおかげで、彼は会社を整理することができた。  従業員に退職金を支払って、残金を投資に回すことにしたんだ。  宝田氏はその後は、大きな仕事はしていない。  とても、苦しんでいたそうだよ。  光、君のお父さんはね、沢村弁護士に泣きながら言ったそうだ。  必ず、光を幸せにする、ってね。  娘の死によって手に入れたお金で、自分は幸せに暮らしている。  自分にできることは、光を立派に育てることくらいしかない。って……」  音無さんの肩が震えていた。  光のお父さんが苦しんだように、その秘密を共有し、守っていた沢村弁護士も辛かったに違いない。  そして、それを引き継いだ音無さんも……。
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