☆彡 パンドラ後半

8/19
前へ
/408ページ
次へ
「光、この間は……、あの、ノート……」 「あ……、うん。そ、それは」 「私が処分しました。あれはもう、ありません」  光の肩越しに泉さんが割って入って、きっぱりと言い放った。 「そうですか……、良かった」  小枝子さんは胸に手を当て、安心したように息を吐き出した。  気のせいか、背中が丸くなったみたい……。 「小枝子さん、教えてくれ。あんたが光に対して、どうしてあんなに冷たい態度だったのか。あんたにもそうする理由があったのだろ?」  師範が縋るように小枝子さんににじり寄って、声を掛けた。  小枝子さんは、師範と光を交互に見ながらしばらく黙っていたけれど、意を決したような顔つきで大きく頷いた。 「光……、まずは、姉さんの話からするね……」  ゆるぎない覚悟をはらんだ強い瞳を、光へそして私たちへと向けた。 「私の姉、宝田聖子は17歳の時、家を出ました。  家出をする前の晩、姉は『小枝ちゃん元気でね』と言って、うっすらと笑っていました。  それが私にとって、最後に見た姉の姿でした」  こうして、小枝子さんの告白は始まった。
/408ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加