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「あれは、姉が高校2年生の夏休み中でのことでした。
何かの理由で、親と大喧嘩した後『やりたいことがある』と言い残し、家を出て行ってしまいました。
両親は警察に捜索願を届け出ましたが、夏休みにはよくあることらしく、警察も活発には動いてくれなかったそうです。しかし夏休みが明けても、姉は戻ってこなかった。
その時、私は小学生で……、正直よく分からなかった。
でも心配している両親を目の当たりにして、自然と『姉が悪い』って思っていました。
そして、姉のいない生活に慣れ始めたある日、姉を知っているという人がうちにやってきました。
今思えば、週刊誌の記者だったと思う。
その人が姉の写真を見せてくれたんです。
ステージ用の濃いめの化粧をしていて、満面笑顔の写真でした。
ニューヨークで今、話題のダンサーだ、って。そして、姉の活躍を記事にしたい、と言われたんです。
聖子がニューヨークでダンサーとして活躍してる、と聞いて、私たちは驚きました。
姉が出て行ってから実に、3年も過ぎていたんです。
父と母が、どれほどの想いでこの3年間を過ごしていたことか……。
母は『今すぐ、会いに行きたい』と記者に頼み込んでいました。
記者は、もちろん伝えます、と請け負い、インタビューを申し出てきたんです。
私達はこの3年間、ずっと探し続けていたことを話しました。そして姉に対して、『会いたいです』とか『自慢の娘です』とメッセージを託し、インタビューは終わりました。
このことによって私たち家族は『これが聖子のやりたかったことだったのだ』と、これまでの経緯を水に流し、純粋に応援しようと決めました」
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