☆彡 パンドラ後半

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「これを見た時の衝撃は、今でも忘れられないわ……」  小枝子さんは当時の事を思い出したのか、苦しそうに顔を歪めた。 「失礼します……」  誰もが、触ってはいけないような気がして遠目で見る中、泉さんが手を伸ばして雑誌を引き寄せた。  そして目を落とした途端に凶悪な顔へと変わる。 「有頂天になっていた私たちは、まんまと地獄に突き落とされた、ってわけ」  その様子を見た小枝子さんは、同調するように目を吊り上げた。   「お父さんの仕事にも影響が出たし、私だって学校へ行けなかった。  お母さんは、外にも出られなくなった!  私たち3人は自分たちの身を守ることに必死だった……」  師範が泉さんに手を伸ばし、雑誌を受け取る。  私も横から覗き込んだ。   『私は家族に捨てられた』  という小さな見出しがついた記事。  そして、そのあとに続く内容は、古い考えに凝り固まった厳格な父、その父に従う世間体ばかりを気にする母、引きこもりの妹、そんな家族に囲まれた哀れな少女が、ダンサーを目指して渡米することを決心した、というものだった。
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