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小枝子さんは黙って、私を睨みつけた。
「私は子供だったの。だから知らないわ。でも、私がこの家を嫌っていたのは、本当」
「じゃあ、中らずと雖も遠からず、ってやつなの? そんなの、私でも家出するわよっ! っつ」
思わず声を荒げて言い返してから、光に向けて「ごめん……」と声をかけた。
光はじっと雑誌の写真を眺めていた。
その姿が、傍から見ているとあまりにも痛々しくて……、やるせない。
「小枝ちゃん……」
「な、なに? 光」
光の呼びかけに、小枝子さんは少し身構えて声を上ずらせた。
光の方は、そんな小枝子さんを見ることなく、写真に目を落としている。そして
「この雑誌、もらってもいいかな?」
そう小さく問いかけた。
「私、セイコさんの姿、初めて見たから……」
顔を上げた光の表情は、どこか幼くて、何かに縋っているみたいで。
横にいた泉さんが無言で抱きしめるくらいに儚かった。
泉さんの腕の中にいてくれて良かった。
そうじゃなかったら、今すぐ消えてしまうんじゃないか……って怖くなるくらい、その姿は弱々しく、ぼんやりしていた。
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