40人が本棚に入れています
本棚に追加
「それでもね、お母さんは受け入れようとしていたみたい。やっぱり母親なんだよね」
小枝子さんは、気を取り直したように顔を上げた。そして、また一つ思い出したようにやや声を高めた。
「でもね、ある日学校から帰ると、お母さんはテーブルにうっ伏して泣いていたの。
私が『どうしたの?』って聞いたら『聖子の子供は、父親のいない子だった』って、そう言ったの。
その時は、意味が分からなかった。
でも、お父さんとお母さんは絶望的な表情で何かを話し合っていた。
『聖子のことはもう諦めろ』ってお父さんが言っていたのを覚えてる。
私がその理由を知ったのは、姉さんが死んだあとだった。
姉さんが『デザイナーベイビー』を身ごもっていたこと知って、お父さんは姉さんを勘当することに決めたんだって」
「そのくらいで、か……?」
今度は泉さんが声を発した。
低くて、憎々しい声……。
こんな声、聞いたことないし。ちょっと、って、突っつけないくらい、怖い顔している……。
最初のコメントを投稿しよう!