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「そのくらいで……、ですって?」
小枝子さんは、顔を赤くして泉さんを睨み付けた。
「あなたは全然わかってない! 週刊誌はね、私達の周りを時々うろついていたの。
いつ、姉さんが帰ってくるか、ってね!
姉さんが、そんなおかしいなことして産んだ子供なんか連れてかえ」
「黙れっ!!」
師範がものすごい剣幕で怒鳴った。
「小枝子さん、もう黙ってくれ……」
師範はそう言ったきり、手の平で目元を覆うってしまった。
「私はね……」
すっかり意気消沈した小枝子さんは、かすれ声で言葉を綴ろうとする。
彼女の頬も濡れている。それでも、かまわず話し続けた。
もう、何もかも全て吐きださなければ、この人は前に進むことができないのだろう。
壊れてしまった宝田家の人たちの人生を吐きだしてしまわなければ……。
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