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「私はね……、姉さんが死んだって聞いた時、悲しみよりも先にホッとしてしまったの。
もうこれで、姉さんに振り回されなくて済むって……。
だから正直、どうしてお父さんが光を連れて帰って来たのか不思議だった。
けどね、光と暮らすようになって、少しずつ分かって来た。
お父さんもお母さんも、姉さんに負い目を感じていたんだって。
家出した娘を、あんな姿で踊っていた娘を切り捨てた、自分達を責めていたのよ。
父は、人が変わったように光に愛情を注いでいた。
光……、安心していいよ。お父さんやお母さんの愛情は本物だったよ」
小枝子さんは、泉さんに抱かれている光を見やって小さく微笑んだ。
「私もね、光が可愛かった。本当に、妹のように感じていた。
光は私達の宝だったと思う。
思えば、あの頃が一番幸せなときだったね。本当に、幸せだった……」
涙で濡らす頬をハンカチで拭いながら、小枝子さんはやっと穏やかな顔つきになった。
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