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「それなら!」
いきなり師範が立ちあがって、小枝子さんを上から睨みつけた。
「それなら、どうして光を見捨てたんだ?
あの後、光はな……、あんたが出て行った後……、酷い有様だったんだぞっ!」
圧倒されるような剣幕で、師範が一歩前に出た。
「師範‥…」
私や泉さんが立ちあがる前に、光が師範と小枝子さんの間に割って入っていた。
「師範……、お願い……」
光は正面から師範の両腕をとって、肩に顔を埋めている。
「ちょ、二人とも……、こっち座って!」
もう、今度はこのおっさんかっ!
私は立ち上がって、光と師範をソファに座らせた。
そして、泉さんの隣に移動する。椅子取りゲームじゃないんだからさー!
「すまん、光、思わず……。私も年だな……」
師範は懐から出した手拭いで目頭を拭いながら、光の手を握りしめていた。
私は横目で泉さんを睨んで、脇腹を小突いてやった。
こんな時に羨ましそうな顔で見てるんじゃないわよ。
泉さんは一瞬唸り声をあげてから、居住まいを正し
「それで……あの、小枝子さんが出て行った理由というのは?」
刑事モードに切り替えて、質問を口にした。
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