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あの日、文照氏が真田に宛てた聖子さんの手紙について、本人によるものかどうかを問い詰めたところ、真田は飄々とした様子で偽物だと認めた。そのうえで
『偽物だとしても、今は本物になりましたよ。現に、あなた達はこの手紙のおかげで約80万ドルものお金を手に入れたのでしょう?』
訳知り顔でそう言った。
何故、そんなことしたのか? 手紙を作った目的は何か?
そう、真田に詰め寄った。
真田は優雅に立ち上がり、楽しそうに歩きながら説明した。
『僕はね、セイコを気に入っていたんです。
彼女の死を美化させたかった。
いくら僕が『聖子は子供を愛していた』と言ったところで、全米を泣かせるような物語は造り出せない。
テレビや雑誌への餌を用意する必要があったんですよ。
それに、もし仮にロバートが警察に捕まって、パラペラ話すようなことになっても、そう簡単には覆すことができないようにしようと思ってね』
『ペラペラって……。君は何を知っているんだ……?』
文照氏がそう訊くと、真田は得意げな様子で、椅子に座った。
そして両手を目の前で組んで、その上に顎を乗せた。
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