☆彡 パンドラの真実

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 その様子は、常人とは思えないくらいに、凶暴な微笑みを浮かべていた。 『宝田さんだって、苦しんでいた。あなたは誤解している!』  こらえきれず、沢村弁護士は声を荒げて抗議したほどに。  しかし真田は、構わず言葉を続けた。 『それから、これはロバートにもお仕置きなんですよ。  彼には一生、逃げ続けてもらうことにしたんです。  彼はね、抜け駆けしたんです。  セイコが金髪隻眼の子供を欲しがってる、って知って、僕はセイコを諦めたのに、ロバートの奴は、こっそり担当看護師を買収して、自分の精子とすり替えたんですよ。  酷い男ですよね。だから、子供は……。おわかりですね?  ロバートが思わずセイコを突き飛ばして、赤ん坊を守ったわけも……』  文照氏は、その場に膝をついた。 『何と言うことだ……。それじゃ……、その男が全ての歯車を狂わせたというのか?』 『そうですよ。しかし、あなたにロバートを責める資格がありますかね?  少なくとも、ロバートはセイコを見捨てたりはしなかった。  彼は本気で父親になるつもりでいたように見えましたがね』  文照氏は黙って目を閉じた。ただ口元を覆う指の隙間から、獣の唸り声のような音が漏れていた。  父親になろうとした。赤ん坊を守ろうとした。しかし、結果的に愛する女性を殺してしまった……。  そして今なお、逃走しているその男を想った。 『ロバートがどうして逃走しているか……。  あなたに慈悲の心があるのなら、教えますよ? ただし、条件がありますが……』  文照氏は、真田の要求を呑むしかなかった。  これが犯罪であろうと、どんなに苦しむことになろうとも……十字架を背負う覚悟を決めたのだ。
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