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「光……ごめんね。今まで……辛い思いさせて……本当にごめん」
小枝子さんが光の傍まできて、膝をついた。
光は、そんな小枝子さんを見えていないみたいに、ただ放心していた。
「真田に言われたの。
『背負えないのならお逃げなさい。国際指名手配されている犯人に協力しているなんてね。
あなたの人生も終わりますよ? 宝田の籍を抜けて、リッセトしなさい』って。
――私には、逃げることしか考えられなかった。
全てを放棄した。
でも、苦しさは変わらなかった。
だから……ここに来たの。光から軽蔑される覚悟で、来たの。
光……何とか言って。お願いだから……」
小枝子さんはその場に泣き崩れた。
けれど、光は無表情のまま何も言わなかった。
ただ、大きな瞳から涙だけが流れていた。
「今日のところは、私が光さんを連れて帰ります。いいですね?」
泉さんがそう確認して、光を抱きかかえて立ち上がった。
音無さんが手を貸そうと立ちあがったのを、掌で制し
「では、また明日連絡します」
そう言って光を背負うと、事務所を出て行った。
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