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「小枝子さん、送ります」
音無さんが立ちあがった気配で、私達は顔を上げた。
どうやら、しばらく放心していたみたい。
師範も目を覚ますかのように、自分の頬を両手で何回か叩いている。
小枝子さんは、音無さんにお礼を言ってから
「結婚したのは本当なの。夫がホテルで待ってるから、一人で帰ります」
幾分しっかりした口調でそう言って
「今までのことも、今日のことも夫は知らないの。
墓場まで持っていくつもりだから、心配しないでください。皆さんにも、もうお会いすることはないかもしれないけど、どうか光をよろしくお願いします」
そう締めくくり綺麗にお辞儀した後、事務所を出ていった。
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