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「では、お二人は? 送りましょうか?」
音無さんの問いかけに、師範は首を振った。
「中山さんを送ってやってくれ。私は一人で、帰る……。
なぁ、音無くん、一つだけ教えてくれ。
宝田さんがやっていたことは、犯罪なのか? ただの墓参りだろ?
ロバートとかいう、その男が本当にそこにいたかどうか、証拠でもあったのか?」
「明確な証拠があったかどうかは、わかりません。
しかし仮に、本人を見かけていたとしても文照氏が犯罪に問われることはありません。
それは、沢村弁護士からも伝わっていたと思います。
それなのに、何年も言う通りにしていたわけですから、犯罪うんぬんは関係なく、定期的に何かしらのメッセージを受け取っていたのだと思います」
「なに? それ、どういう意味?」
すっかり気を取り戻した私は身を乗り出した。
そうだ、呆けている場合じゃない。情報は多い方がいいんだから!
「考えてもみてください。どうして、毎年律儀に墓参りに行っていたと思いますか? ロバートに対する慈悲だけで続く行為とは思えない。
これは、沢村弁護士と俺の見解ですが、文照氏は、ロバートもしくは真田から定期的に脅されていたのではないでしょうか?
例えば『約束を守らなければ、全てを明かす』とか……」
そうやって、毎年墓参りに来るように、強制していた。
一年に一度、光を眺めるだけのために。
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