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ロバートの気持を考えてみる。
彼はこの20年間、何を思い、生きてきたのか。
娘を見詰め続けた。少なくとも光が13歳の時までは……。
光の両親が亡くなって、同じ日に墓参りに行かなくなって7年が経っている。
「音無さん、光のお父さんが亡くなった後も、ロバートはお墓に来ていたのかしら?」
私がそう訊くと、音無さんは力無く首を振った。
「分からない。
ただ、その頃からロバートは地下に潜ったんじゃないか、と言われている」
「あえて、誰からの情報とは聞かないけど、音無さんからは情報提供してないわよね?」
「もちろんだよ。弁護士だからね、これでも……」
そう言ってから、やけくそな顔を私に向けた。
「中山さん、公安警察ってね、日本で暮らしている人間のありとあらゆる情報を調べられる、って言っても過言じゃないんだよ?
俺よりも彼らの方がたぶん、――多くの情報を持ってるよ」
「なにそれ? 公安警察って、なにもの?」
「国民情報の巣窟」
「おお、こわっ」
私はふざけて肩を窄めて見せた。
公安の情報収集って、つまり柏木さんじゃないの?
とてもじゃないけど、情報豊富とは思えない、冴えない眼鏡姿を思い浮かべて苦笑した。
でも、確かに柏木さんはロバートについても調べていた。
真田の周辺を嗅ぎまわっていたり、ファイルがどうこう言っていたのは、きっとこの事件が関係しているんだ。
ロバートが逮捕されたら、光はどう思うのだろう……。
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