☆ 光

7/8
前へ
/408ページ
次へ
『光? 光?』  私を呼ぶのは誰? もう生まれ変われるの? 『違うよ。僕は君のお父さんだ。僕と一緒に行こう。  君のために、君のためだけに生きてきた』  でも、私はまだ光じゃないでしょ?  私は死んでしまって、ちゃんとした光になるのを待ってるの。 『大丈夫だよ、光。安心して。  君を苦しめたセイコもお父さんも僕が殺してあげたから、君は自由だ。  僕のところにおいで。僕が護ってあげる』  こんな人知らない。  顔を覗きこんだけど、目元が陰になっているのか、瞳が見えない。  真っ黒な空洞。   『ほら見てごらん、あいつらの無様な恰好ったら、ないね』  その人が指さすその先には、セイコさんとお父さんが仰向けに並んで寝ている。  けれど、おかしい。  真っ赤なペンキみたいな液体に二人の体は浸っていて、体中真っ赤に染まっている。  まるで……血まみれみたい―― 『イヤッ――――!!  どうして!? どうして、こんなことするの?   私はセイコさんに殺されて良かったのに。  死んで、次にはちゃんとした光になるの! そうすれば、みんな幸せになれる。  今の私じゃダメなの。みんなを悲しませるだけ。不幸にするだけ!  どうして、セイコさんを殺してしまったの? 死ぬのは私のほうだったのに!』 『今更そんなこと言わないでくれ。光のために、光のためだけに生きてきたのに。  光、それなら、光の人生を僕にちょうだい。  死んでも良かったなら、君の残りの人生を僕にちょうだいよ』  私の? 私の人生でいいの?
/408ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加