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『バカ! 光! 勝手に人生あげるなっ!
あんた、私の傍にいてくれるんじゃなかったの?』
明子……、ごめん。傍にいるって約束したのに……。
明子が傍にいてくれたから私、頑張れた。だけど、私……
『光! わしは諦めんぞ! 娘になってくれるんじゃろ?
小枝子さんにも言ったからな、光をワシにくださいとなっ!』
師範……、寂しい思いをさせてごめんなさい。あんなにお世話になったのに……、ごめんなさい。でも、私でいいの? 私は……、光じゃないのに……
『良いに決まってるだろ、光。家族って言ってくれたじゃないか。兄さんは寂しいよ。戻っておいで、光』
音無さん……、ずっとずっと優しかった。
私はその優しさに甘えてばかりで……、ホントはそんな資格、私にはないのに……
『資格なんて、どうでもいい! 言ったよね? 今度妙なこと考えたら、監禁するって! 忘れたのか? あなたがいなくなったら、私もいなくなるしかないんだ。
この世から、私を消し去るつもりか!?』
泉さん……。
嫌だ。あなたがいなくなってしまうなんて……、そんなのイヤだ。
『だったら、目を開けろ! 私を見ろ!
好きだ。光じゃなくたっていい。何者だってかまわない。あなたが好きなんだ!
私を好きなら今すぐ目を開けろ!」
好き。泉さんが好き。
光じゃなくていいの? 目を開けたら、抱きしめてくれる?
『約束する。絶対に離さない。そう言ったでしょ?』
泉さんは笑って両手を広げていた。その胸の暖かさを知っている。
もう一度、もう一度だけでもいいから、あの腕の中におさまりたい。
ギュッと、抱きしめて欲しい。
夢でもいいから……
私はゆっくりと、恐る恐る目を開けた。
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