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「柏木!」
警察庁を出たところで、後ろから声をかけられた。振り向くと、谷木さんが小走りで向かってくる。
一瞬何事かと身構える俺に追いついた谷木さんは、はぁ~、と前髪をかき上げ、若干上気した頬を緩めた。
「何ですか?」
俺は平常心で尋ねながら、この人の、こういうさりげないイケメン仕草を脳内のメモに取った。今度やってみよう。
谷木さんが普段どんなところで、何をしているのか、正直俺は知らない。
だから、今、こうして呼び止められて何を言われるのか、想像も及ばないわけで。
俺は緊張しつつ、谷木さんの次の言葉を待った。
「お前今日、例の教授のところに行くんだよな?」
なんだ……そんなことか。肩の力が抜けた。
「はい。13時にアポ、入れてあるので、これから昼食込みで行こうと、思っているんですけど……、何か、ありました?」
最後の言葉が尻すぼみになってしまったのは、谷木さんがにやりと笑ったからだ。
この人のこういう顔が出ると大概、碌なことないんだ。
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