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俺はすっかりやさぐれた。
「訊いたら、教えてくれるんですか……」
「少なくとも、ヒントは与えただろうな。
柏木、もっと貪欲になれよ。
情報っていうのはな、勝手に入ってくるものじゃない。
自分から探るものなんだよ」
谷木さんはいつものご主人様の顔を俺に向ける。
「周りの人間を観察しろ。何を考えているか、どんな情報を持っているか。
それが、対象者なら尚更だ。どんなヒントが隠されているかわからないんだ。
観察して探れ、そしてそれをまとめろ、そうすればそこから真実が見えてくる」
『観察しろ。探れ。情報をまとめろ』
それが公安警察の基本中の基本だっていうのに、新人の俺は、それすらもままならない。
「なるほどね。参考にさせてもらいます」
嬉しそうにタブレットにメモする明子さんを、俺は力なく睨み付けた。
「それで? こんな無意味な用事のためにわざわざお出ましになったわけじゃないんでしょ?」
どうやら二人とも、俺に説明する気は無いみたいだ。
二人の会話を観察して、探って、自分で答えをまとめろ、ってか……。
俺も内ポケットからタブレットを取り出して、谷木さんの言葉を待った。
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