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明子さんは、先ほど谷木さんから受け取ったメモをデスクの上に静かに置いた。
俺は机の上に寄せられた水色とピンクで配色されているその爪を眺め、そして、つややかな薄いピンク色の唇が開くのを黙って眺めた。
明子さんはやや棒読み口調で「『何もかもが明らかになった』……そうですよ」と唇の色とは相反するような、ニヒルな大人の微笑みを口元に浮かべて言い放った。
真田は、見るからに顔色を変えたけど、口元の微笑みは崩さなかった。
「ほう。それは、誰からの伝言かな?」
「私もよくわかりません。ここに来る途中、そう言えって云われて、このメモを渡されただけですから……。
でも、丁度良かったんです。
私もあのファイルの内容に興味が無くなったので」
「わかった。このメモは預かろう。ご苦労だったね。もういいかな?」
真田はメモ用紙を半分に折り畳みながら、上目遣いでこちらの出方を伺っているように見える。
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