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けど、今頃真田は心中は、穏やかじゃ無い筈だ。
中山明子というただの学生に、あそこまで言われたという事は、彼女の裏にいるであろう人物は、もっと探っているだろうと……。
実際、谷木さんがどこまで探り当てているのかは謎だけど。
明子さんは、悔しそうにコーヒーにミルクを流し込み、勢いよくかき混ぜていた。
うず潮みたいになってるぞ……。
「でも実際、真田は宝田さんをどうするつもりだったのかな?」
俺が呑気な声でそう投げかけると、明子さんは持っていたカップをトレイに下ろした。
「さあね、何かの餌にでも使うつもりだったのか……、それとも、どこかに閉じ込めて、うっとり見惚れたかったのか……」
やけくそな返事が返ってきた。
「うーん、でも餌にするとしたら、相手はロバート松岡よね……。
と、いうことは……、真田はロバートの居場所に心当たりがあるってことよね……」
ぶつくさ呟き、なにやら試案している彼女に、谷木さんからの命令を思い出し声を掛けた。
「あのさ……、ロバート松岡って……もしかして」
「ごちそうさまっ!」
パシッと音がして、明子さんは両手を合わせた。
「柏木さん、このあと仕事?」
「あ……、うん、まあ」
曖昧に返事を返すと、明子さんはにっこり笑った。
「じゃあ、またね」
そう言ってトレイを持って立ち上がった。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
俺もトレイを持って立ち上がった。
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