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「うん。あのさ……。
明子さんがどう思っているか、わからないけど……、暴走はしないで欲しいんだ」
「暴走? 私に何ができるっていうの? 何かできるんなら、今すぐ教えて欲しいわよ!
だって、谷木さんは真田教授とロバートが繋がっているって、確信している。
柏木さんだって、知ってるんでしょう?
あんな伝言! あれは――、『知ってる』ということでしょ!?」
「何を? 俺が何を知ってるんだ?」
俺の返事に、明子さんは口を噤んで俺を睨みつけた。そして小さく息を吐いて、ゆっくりと口を開いた。
「柏木さんは、どうしてロバートを調べているの?
彼が何をしたって言うの? 20年前の事件は」
「20年前の事件は、関係ないんだ」
俺は、彼女の言葉を遮った。
明子さんは俺の質問には答えずに、いつも自分の知りたいことを唐突に訊いてくる。
それは狡いやり方だし、俺は突っぱねることもできる。
谷木さんが見たら、不合格を叩きつけられると思う、けど……
俺は、彼女の知りたい情報を与えることにした。
「あのさ……ロバートはさ……、テロリストなんだよ。
詳しいことは話せないけど、公安は彼を追っているんだ」
明子さんは、何も言わずにゆっくりベンチに座った。
今までの勢いがどこに行ったのか、小さくなって俯いてしまった。
「そっかぁ。彼、テロリストなんだ……。へえ……」
そしてポツリと呟いて、そのまま動かなくなった。
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