★ 大学のベンチ

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「うん。あのさ……。  明子さんがどう思っているか、わからないけど……、暴走はしないで欲しいんだ」 「暴走? 私に何ができるっていうの? 何かできるんなら、今すぐ教えて欲しいわよ!  だって、谷木さんは真田教授とロバートが繋がっているって、確信している。  柏木さんだって、知ってるんでしょう?  あんな伝言! あれは――、『知ってる』ということでしょ!?」 「何を? 俺が何を知ってるんだ?」  俺の返事に、明子さんは口を噤んで俺を睨みつけた。そして小さく息を吐いて、ゆっくりと口を開いた。 「柏木さんは、どうしてロバートを調べているの?  彼が何をしたって言うの? 20年前の事件は」 「20年前の事件は、関係ないんだ」  俺は、彼女の言葉を遮った。  明子さんは俺の質問には答えずに、いつも自分の知りたいことを唐突に訊いてくる。  それは狡いやり方だし、俺は突っぱねることもできる。  谷木さんが見たら、不合格を叩きつけられると思う、けど……  俺は、彼女の知りたい情報を与えることにした。 「あのさ……ロバートはさ……、テロリストなんだよ。  詳しいことは話せないけど、公安は彼を追っているんだ」  明子さんは、何も言わずにゆっくりベンチに座った。  今までの勢いがどこに行ったのか、小さくなって俯いてしまった。 「そっかぁ。彼、テロリストなんだ……。へえ……」  そしてポツリと呟いて、そのまま動かなくなった。
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