★ ロバート松岡

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「そういやぁ、泉の特殊任務っていうのは?」  いい加減、ボヤいてばかりもいられない。  俺は気持ちを切り替えて、再度谷木さんに問いかけた。  谷木さんは器用に片眉を持ち上げて、口を開いた。 「泉? あいつは公安じゃないぞ?」 「いや、わかってますよっ! けど、谷木さんが言ってたんじゃないですか!  『泉は特殊任務中』って!  それに、この事件に宝田さんが絡んでいるんだったら」 「お前の彼女がそう言ったのか?」 「はっきりとは言ってませんが……、まあ、関わっているらしかったです」 「ふーん。やっぱ、あれか? 父親か?」 「えぇ!? そうなんですか?」 「お前……、聞いたんだろう?」  谷木さんがたま息交じりの呆れた声を出す。 「お前って、ホント鈍感な童貞な。彼女、かわいそうになぁ……」  いや、そんなはっきり言わなくたって……、いや、ちがっ!! 「ちょっ! 童貞じゃないですよっ!! って、じゃなくて!!  いや、セイコという人物が母親なのでは……? とは思っていましたが……。  ロバート松岡が宝田さんの父親!? じゃあ、父親が母親を殺したんですか?」    この俺の質問には、谷木さんは何とも複雑な顔を浮かべた。 「まあ、そういう事だろうな、というのが俺たちの予想だな。  泉に問いただしたけど『そのことは、捜査には関係ないでしょ?』とか言いやがって……、口をわらねぇの。あいつ、ほんっとにカタイよなぁ」  そう言って肩をすくめて苦く笑った。  言わないってことは……。つまり――肯定の可能性が高い。  で、それを泉も明子さんもそして、宝田さんも知っている……、のか?
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