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「谷木さん、泉、今どこにいるんですか?」
俺は知らず知らずのうちに立ちあがって、谷木さんと向かい合っていた。
何だか妙に焦っていた。
だって、いいのか? 宝田さんの側にいなくても。
あの人、今、めちゃめちゃピンチ……
「……宝田光に張り付いてるよ。
誰にも渡さないぞ! ってすごい剣幕でな」
谷木さんは俺の勢いに押されたのか、ふてくされたような顔で口を開く。
「えっ? そ、それじゃあ!?」
俺は興奮していたせいか、谷木さんの腕を掴んでいた。
谷木さんはびっくりした顔で俺を凝視してから、俺が掴んでいる腕に目線を落とした。
「わぁ、すみませんっ!」
興奮して、谷木さんの腕掴んでたー!
焦って谷木さんの腕を離したけれど、谷木さんの目線はそのままで、ふっ、と息を漏らした。
「お前って、そういうやつだよなぁ。
普段はボケっとしてて、自信がないから後手後手だし、経験あるって言っても相手リードの万年童貞みたいな奴なのになぁ」
「ちょっ!!」
谷木さんの酷い言い様に、すぐさま反論しようとしたのに
「誰かがピンチになると、急に男らしくなっちまうのな。くくくっ」
谷木さんのこんなセリフと、お馴染みの含み笑いが口から漏れ出てくるから、それこそアホみたいに口を半開きにして谷木さんを見詰めてしまった。
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