★ ロバート松岡

10/11
前へ
/408ページ
次へ
「泉には24時間体制で、宝田光に張りついてもらっている。   ロバート松岡が父親なら、彼女に接触してくる可能性を考慮してな。  幸い、泉なら彼女に張りついても問題ないだろう、という配慮だ」 「はぁ……」  俺は想定外の答えをもらって、やや気の抜けた返事を返した。  谷木さんはそんな俺の反応にニヤリとした。 「と……、いうのは表向き。泉のやつはただ今、暴走中だ」 「うえっ!? ぼ、暴走っ?」 「しぃ――。柏木、声がでかい」  谷木さんは人差し指を唇にあてて、俺を咎める。そのわりに、なんでこんなに嬉しそうなんだ? この人……? 「宝田光は今、なんて言うのかぁ……、再起不能? らしいぜ。  一日中ぼけぇーとして、起きてるんだか寝てるんだか、わからないような状態らしい。  で、そんな彼女を、泉が甲斐甲斐しくお世話してる、ってさ。  公安の俺はもちろん、小西部長にまで牙むいて、『彼女は俺が守るっ!』ってな」 「再起不能……? 病院へは行ったんですか?」 「さあな。まあ、せいぜい『愛の力』とやらで、治すんじゃねぇの?」  何だかよくわからないが、とりえず泉が側にいるなら大丈夫なんだろうと、俺は無理矢理納得することにした。 「そんなわけで、何人も近づけねぇから、だったらロバート松岡からの接触の可能性を考慮して、『宝田光付けの緊急要員』ってことにしたんだよ。  ったく……、小西部長も甘えぇよなぁ」  愚痴るセリフとは裏腹に、谷木さんはそう楽しそうにぼやいた。
/408ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加