40人が本棚に入れています
本棚に追加
「泉には24時間体制で、宝田光に張りついてもらっている。
ロバート松岡が父親なら、彼女に接触してくる可能性を考慮してな。
幸い、泉なら彼女に張りついても問題ないだろう、という配慮だ」
「はぁ……」
俺は想定外の答えをもらって、やや気の抜けた返事を返した。
谷木さんはそんな俺の反応にニヤリとした。
「と……、いうのは表向き。泉のやつはただ今、暴走中だ」
「うえっ!? ぼ、暴走っ?」
「しぃ――。柏木、声がでかい」
谷木さんは人差し指を唇にあてて、俺を咎める。そのわりに、なんでこんなに嬉しそうなんだ? この人……?
「宝田光は今、なんて言うのかぁ……、再起不能? らしいぜ。
一日中ぼけぇーとして、起きてるんだか寝てるんだか、わからないような状態らしい。
で、そんな彼女を、泉が甲斐甲斐しくお世話してる、ってさ。
公安の俺はもちろん、小西部長にまで牙むいて、『彼女は俺が守るっ!』ってな」
「再起不能……? 病院へは行ったんですか?」
「さあな。まあ、せいぜい『愛の力』とやらで、治すんじゃねぇの?」
何だかよくわからないが、とりえず泉が側にいるなら大丈夫なんだろうと、俺は無理矢理納得することにした。
「そんなわけで、何人も近づけねぇから、だったらロバート松岡からの接触の可能性を考慮して、『宝田光付けの緊急要員』ってことにしたんだよ。
ったく……、小西部長も甘えぇよなぁ」
愚痴るセリフとは裏腹に、谷木さんはそう楽しそうにぼやいた。
最初のコメントを投稿しよう!