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「よろしくお願いしますっ!」
19時ちょうど。
グレーのスーツ姿の俺は、とあるワンルームマンションの一室にて、新人研修よろしく、腰を折った。
ごくごく普通の1LDKの部屋。当然家具なし。
入居者は『20代サラリーマンの一人暮らし』という設定らしい。
なもんで、平日で出入りするときは必ずスーツ姿。
一応、人目に付きにくい時間が交代の時間に設定されているけど、まあ、念には念をってことで、交代要員同士の服装を揃える。
「どうだ? 様子は?」
「いや、まだ動きはないっすね」
「まあ、今夜あたり動き出すんじゃねぇかなぁ~」
ニヤニヤし始める谷木さんを、少し呆れた顔で眺め、立ちあがる。
目線は、ほぼ谷木さんと同じくらいか……
「まーた、なんか仕掛けたんでしょう?」
「まあな。あ、とりあえずお前ちょっと休めよ。柏木座らせとくから」
「すみません、じゃあ、ちょっと頼みます……」
「ああー疲れた」とごちて、首をカキコキ鳴らしながら洗面室に入って行く後ろ姿を、俺は横目で追う。
あの人を警視庁内で見た事が無い……。
名前は佐藤。年は俺の一つ上で26歳。
けど高校卒業と同時に警察官になったから、警官歴は俺よりも5年先輩ってことになる。と紹介されたけど、どこまで本当かはわからない。
だってさ『佐藤』なんて、いかにも多い名前だし。
いや、だからこそ本名なのかも知れないけど……。
ただ、谷木さんからの紹介だから、きっと警察関係なんだろうな。
しかも秘密なんだろうな、くらいの認識。
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