★ 張りこみ

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 東京有明マラソンの最中に、起こった例の麻薬事件でのこと。  泉が巻き込まれて、背中を刺されて……。  その時、俺も泉が収容された病院に谷木さんと行ったんだよな。  病院に駆け付けた泉部長、小西部長と合流した俺たちは、焦っていたせいもあるんだけど、100%集中治療室に入っているのは泉だろう、って疑いもしなかった。  しかも、泉兄の様子からして、相当ヤバそうだ、って思いこんでいた。  だって、泉兄が紛らわしく集中治療室の前で項垂れていたんだから、そう思うだろ、普通。  (泉に言わせると、わざとだそうだけど……どんな兄だ!?)  泉の父、泉部長は半分泣きながら「春香……」とかって呟いちゃってたな。  で、そこに泉母が現れて、泉はもう病室でグースカ眠ってて、怪我も大したことないって分かって、一同、腰が砕けるかと思うくらい、拍子抜けした。  泉父なんて、泉がグースカ爆睡してる姿見て、泣きながら笑ってたもんなぁ。  ありゃあ、完全に親ばかの顔だった。  そっか~。まあ、弱みと言えば……、アレが『弱み』になるのかも知れないな……。  俺が思いだし笑いを我慢しつつ、思い出に浸り 「柏木は……」  佐藤さんが俺に向かって何かを言いかけた時、俺の携帯が震えた。 「あ、ちょっとすみません」  断り、携帯を覗くと、今さっきまで頭の中を占めていた奴。――泉の名前が表示されていた。
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