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東京有明マラソンの最中に、起こった例の麻薬事件でのこと。
泉が巻き込まれて、背中を刺されて……。
その時、俺も泉が収容された病院に谷木さんと行ったんだよな。
病院に駆け付けた泉部長、小西部長と合流した俺たちは、焦っていたせいもあるんだけど、100%集中治療室に入っているのは泉だろう、って疑いもしなかった。
しかも、泉兄の様子からして、相当ヤバそうだ、って思いこんでいた。
だって、泉兄が紛らわしく集中治療室の前で項垂れていたんだから、そう思うだろ、普通。
(泉に言わせると、わざとだそうだけど……どんな兄だ!?)
泉の父、泉部長は半分泣きながら「春香……」とかって呟いちゃってたな。
で、そこに泉母が現れて、泉はもう病室でグースカ眠ってて、怪我も大したことないって分かって、一同、腰が砕けるかと思うくらい、拍子抜けした。
泉父なんて、泉がグースカ爆睡してる姿見て、泣きながら笑ってたもんなぁ。
ありゃあ、完全に親ばかの顔だった。
そっか~。まあ、弱みと言えば……、アレが『弱み』になるのかも知れないな……。
俺が思いだし笑いを我慢しつつ、思い出に浸り
「柏木は……」
佐藤さんが俺に向かって何かを言いかけた時、俺の携帯が震えた。
「あ、ちょっとすみません」
断り、携帯を覗くと、今さっきまで頭の中を占めていた奴。――泉の名前が表示されていた。
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