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玄関を開け閉めする音が、聞こえる。よし、感度良好。
佐藤さんもヘッドフォンを装着すると、玄関からリビングにモニター画像が切り替わった。
「あれ!? 部屋の中にもカメラが?」
「盗聴器とカメラはセットで仕掛けないと」
驚く俺に、さも当たり前のような返事が返ってきた。
なんだ? この人何者だ!?
唖然とする俺を余所に、どっからともなくノートパソコンが現れて、何やら操作を始めた。
「よし。いいぞ~」
嬉しそうな掛け声に引かれて隣に目をやると、佐藤さんの指が踊るようにキーボードの上を跳ねまわっている。
「真田のパソコンをさ~、ちょっと覗かせてもらってるんだけど……、やっと引っかかった」
ボケっと見ている俺に気が付くと、そう言ってウインクする。
なんだかめちゃめちゃ楽しそうだ。
「もしかして……、ハッキングですか?」
スパイ映画とかではすっかりお馴染みの、ある意味チートな設定が、ここで現実に行われようとしている。
「そういうこと! まっ、今回俺が呼ばれた理由はこれってわけよ。
どうした? 今どき珍しいものでもないだろう?」
「あー、まあ、そうですけど……、実際見るの初めてなんで……」
俺は思わず正直に漏らし、まじまじと佐藤さんの手元を凝視した。
何のことやら意味不明な記号や数字が画面に出たと思ったら消え、何枚ものパネルが現れたり、消えたりしている。
こういう人って、本当にいるんだな……。
俺には魔法にしか見えないスキルをお持ちの佐藤さんが『ただ者じゃない』ってことだけは、よーく分かった。
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