★ 張りこみ

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 玄関を開け閉めする音が、聞こえる。よし、感度良好。  佐藤さんもヘッドフォンを装着すると、玄関からリビングにモニター画像が切り替わった。 「あれ!? 部屋の中にもカメラが?」  「盗聴器とカメラはセットで仕掛けないと」  驚く俺に、さも当たり前のような返事が返ってきた。  なんだ? この人何者だ!?  唖然とする俺を余所に、どっからともなくノートパソコンが現れて、何やら操作を始めた。 「よし。いいぞ~」  嬉しそうな掛け声に引かれて隣に目をやると、佐藤さんの指が踊るようにキーボードの上を跳ねまわっている。 「真田のパソコンをさ~、ちょっと覗かせてもらってるんだけど……、やっと引っかかった」  ボケっと見ている俺に気が付くと、そう言ってウインクする。  なんだかめちゃめちゃ楽しそうだ。 「もしかして……、ハッキングですか?」  スパイ映画とかではすっかりお馴染みの、ある意味チートな設定が、ここで現実に行われようとしている。 「そういうこと! まっ、今回俺が呼ばれた理由はこれってわけよ。  どうした? 今どき珍しいものでもないだろう?」 「あー、まあ、そうですけど……、実際見るの初めてなんで……」  俺は思わず正直に漏らし、まじまじと佐藤さんの手元を凝視した。  何のことやら意味不明な記号や数字が画面に出たと思ったら消え、何枚ものパネルが現れたり、消えたりしている。  こういう人って、本当にいるんだな……。  俺には魔法にしか見えないスキルをお持ちの佐藤さんが『ただ者じゃない』ってことだけは、よーく分かった。
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