★ 谷木さん現る

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 翌朝7時、真田が家を出た。  同じタイミングで佐藤さんがグレーのスーツ姿でこの部屋を出た。  大学まで真田を尾行する。  俺は20時に交代要員の人間が来るまで、ここで見張りをする。そして、明日の朝7時に、ここを出る予定だ。  そして今現在。  真田の家への訪問者はいない。部屋の中の盗聴器も音を拾う気配はない。 「あぁ~。暇だなぁ……」  そろそろ昼だ。俺は昨日持参したコンビニの袋をチラリと見た。 「腹も減って来たし……。パンでも食うか……」  長いこと座っていた腰を伸ばそうと、立ちあがったその刹那。  突然、何の前触れもなく、玄関の扉が勢いよく開いた。 「うわあっ!」  よいしょ、かったるいなぁー、と、すっかり油断していた俺は心臓が飛び出しそうなくらいに、ビビった。  ついでに跳ね上がって、床にしこたま尻もちをついた。  交代要員の話なんて聞いてなかったし、カギは!? 閉めたよな!?  なんなんだっ! この人は!? 「谷木さんっ! 心臓に悪いですよっ。  俺の心臓が止まったら、谷木さんのせいですからね!」  思わず声を荒げて文句を言った。 「はははっ。悪い悪い、お前の心臓が止まったら、ちゃーんと心臓マッサージしてやるから~」  洒落になんないことをサラッと言いながら「ほら、弁当」と、昨日俺が佐藤さんに買った定食屋の弁当を掲げた。 「あっ。どうも……」  くそっ、弁当一つで水に流す俺って……。  俺は痛む尻をスリスリしながら、もう片方の手で弁当を受け取った。
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