40人が本棚に入れています
本棚に追加
翌朝7時、真田が家を出た。
同じタイミングで佐藤さんがグレーのスーツ姿でこの部屋を出た。
大学まで真田を尾行する。
俺は20時に交代要員の人間が来るまで、ここで見張りをする。そして、明日の朝7時に、ここを出る予定だ。
そして今現在。
真田の家への訪問者はいない。部屋の中の盗聴器も音を拾う気配はない。
「あぁ~。暇だなぁ……」
そろそろ昼だ。俺は昨日持参したコンビニの袋をチラリと見た。
「腹も減って来たし……。パンでも食うか……」
長いこと座っていた腰を伸ばそうと、立ちあがったその刹那。
突然、何の前触れもなく、玄関の扉が勢いよく開いた。
「うわあっ!」
よいしょ、かったるいなぁー、と、すっかり油断していた俺は心臓が飛び出しそうなくらいに、ビビった。
ついでに跳ね上がって、床にしこたま尻もちをついた。
交代要員の話なんて聞いてなかったし、カギは!? 閉めたよな!?
なんなんだっ! この人は!?
「谷木さんっ! 心臓に悪いですよっ。
俺の心臓が止まったら、谷木さんのせいですからね!」
思わず声を荒げて文句を言った。
「はははっ。悪い悪い、お前の心臓が止まったら、ちゃーんと心臓マッサージしてやるから~」
洒落になんないことをサラッと言いながら「ほら、弁当」と、昨日俺が佐藤さんに買った定食屋の弁当を掲げた。
「あっ。どうも……」
くそっ、弁当一つで水に流す俺って……。
俺は痛む尻をスリスリしながら、もう片方の手で弁当を受け取った。
最初のコメントを投稿しよう!