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「そ、そんな! 宝田さんの精神が不安定だ、って教えてくれたの谷木さんですよ?
それなのに、彼女使うって、どういうことですか!?」
俺は声を大きくしていた。
震えている手に負けないように気力を振り絞った。
「昨日な、『彼女が覚醒した』っていう情報を手に入れてな。
泉がお前に連絡したのもそのせいだろ?
あいつ、俺を徹底的に警戒してるよな~」
谷木さんは口調こそ軽いけど、俺を見据えるその瞳は見たことがないくらいに冷たい。
「それでさ、タイミング良く真田から連絡が来たもんだから、早速持ちかけたわけだ。
『お前がユングだって知ってるし、ついでに、宝田光とフロイトの関係も知ってる』ってな。
真田もさぁ、いい加減ロバートを匿うのに限界を感じていたんだろうな。
渋々ではあったが、身柄の保証を条件に、協力することを約束した」
『柏木、ロバートを捕まえるぞ』
谷木さんの目がギラギラと怖いくらいに光っていた。
そりゃ、そうだよな。
『バタフライ』以来、ずっと血眼になって追っていた『ロバート松岡』に手が届くところまできたんだ。
しかも国際テロ組織に繋がる重要人物らしい、なんていうプレミアがついていて、おまけに殺人容疑まである。
警察関係なら、こぞって手に入れたい大物だ。
だけど……
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