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「だけど、宝田さんを使うのは……、酷いですよ。彼女の事考えたら」
「柏木、ロバート松岡はな、宝田光に会いたがってる。これは、チャンスなんだよ。分かるだろ?
お前の仕事は、泉を宝田光から引き離すことだ。いいな」
俺に最後まで言わせず、谷木さんの鋭利な双眸が俺を捕える。
俺は返事もできず、ただ黙って、谷木さんを見つめた。
谷木さんは流し目で俺をチラリと見て、少しだけ息を吐いた。
「あのなぁ。いくら俺でも犯罪まがいの真似までして、民間人を巻き込むつもりはねぇよ。
彼女には、きちんと納得してもらったうえで協力してもらうに決まってんだろう?
そんな目で見るなよ~」
「どんな目でした?」
「うーん。……猟奇殺人者を見るような目?」
小首をかしげる谷木さんの顔は、いつもの少し挑戦的な表情なんだけど、この人の顔色をいつも伺っている俺は、瞳の中にどこか縋るような色を見つけてしまうんだよなぁ。
やることなすこと無茶ばっかりで、散々振り回されているわけなんだけど。
この人の無茶はいつも仕事のことばっかりで……。
っていうか、この人こんなにイケメンなのに仕事以外、何かやってんのか?
そんなことを考えると、俺は急に口ごもってしまう。
俺も大概だな……と呆れるしかないんだけど……
「本当に、宝田さんの意思を尊重してくれる、って約束してくれるなら……」
俺がポツリとそう漏らすと、途端に子供みたいに笑って
「お前なら、そう言ってくれると思ったよ。約束する」
嬉しそうに俺の肩をポンポンと叩いた。
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