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「お願いします!」
腰を折る俺の頭上から、大きく息を吐き出す声が聞こえた。
「お前って、全然変わらねぇな。相変わらず、おっそろしい程真っ直ぐで、青臭くて……。お前、そんなんじゃ、公安でやっていけねぇよ?」
俺が顔を上げると、谷木さんの眉毛が八の字に下がっていて、優しい口調ながらも、その表情は寂しそうだった。
「俺は公安じゃなくて、谷木さんの下僕です。
公安でやっていけなくても、谷木さんの下僕はやっていきます!」
俺は大真面目でそう言ったのに、谷木さんは「ぶはっ!!」と激しく噴き出した。
「くくくっ、お前って、ブレねぇなぁ。結局俺は、お前には敵わねぇんだよなぁ」
そう言うが早いか、俺の両頬を両手で摘みあげた。
「いで、いで、いでっ! やめれくらはい~!!」
俺が暴れるのもお構いなくキリキリとつねあげから、ぱっと離して
「しゃーねーなぁ……。お前、絶対説得しろよ!」
腫れあがった頬を両手で摩ってる俺の右手を奪い、がっちり握手してくる。
そして
「頼むぞ!」
キラッと光りそうな……、(いや、光ってた。後光が見えた……)その笑顔で俺の腕をバシッと叩いた。
「はい! 必ず!」
だから俺は、ヒリヒリする頬なんかもうどうでも良くなるくらい嬉しくて、思わずその場でビシッと敬礼してみせたんだ。
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