★ 説得

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 コツコツコツ――  俺はスチール製の扉を、3回ノックした。  特に中の様子は聞こえなかったけど、扉は音もなく開いて、その隙間から泉の顔が見えた。 「い、泉? お前……、大丈夫か?」  開口一番、思わずそう口ばしってしまった程、泉はげっそりしていた。  何日か徹夜作業をした時だって、もう少しまともだったと思う。 「あぁ。まあ、入れよ」  泉は体を後ろにやって、俺が入る隙間を作った。  ここは、泉の実家――というか、正確に言えば実家の敷地内にある、離れの家だ。  泉専用の家らしい。  さすが、金持ちは違うよなぁ。自室じゃなくて家なんだからな。  大人2人が入れば、窮屈になるくらいの玄関を上がると、すぐに左側に台所兼ダイニングって言うのかな……、まあそんな部屋があって、右側にも2つ扉がついている。  台所の奥に続き部屋があり、丸いちゃぶ台が置いてあった。  右側にパーテーションの仕切りがあるから、あそこが寝室だろうか。 「とりあえず、栄養ドリンク買ってきたから、飲めよ。お前の顔、酷いぞ……」  俺はキョロキョロしつつも、ちゃぶ台の側に腰を下ろして、持参してきたコンビニの袋を泉に手渡した。  泉は、悪いな……と力なく呟いて 「で、谷木さんの様子、どうだ?」  そう言って、俺の正面に座った。
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