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コツコツコツ――
俺はスチール製の扉を、3回ノックした。
特に中の様子は聞こえなかったけど、扉は音もなく開いて、その隙間から泉の顔が見えた。
「い、泉? お前……、大丈夫か?」
開口一番、思わずそう口ばしってしまった程、泉はげっそりしていた。
何日か徹夜作業をした時だって、もう少しまともだったと思う。
「あぁ。まあ、入れよ」
泉は体を後ろにやって、俺が入る隙間を作った。
ここは、泉の実家――というか、正確に言えば実家の敷地内にある、離れの家だ。
泉専用の家らしい。
さすが、金持ちは違うよなぁ。自室じゃなくて家なんだからな。
大人2人が入れば、窮屈になるくらいの玄関を上がると、すぐに左側に台所兼ダイニングって言うのかな……、まあそんな部屋があって、右側にも2つ扉がついている。
台所の奥に続き部屋があり、丸いちゃぶ台が置いてあった。
右側にパーテーションの仕切りがあるから、あそこが寝室だろうか。
「とりあえず、栄養ドリンク買ってきたから、飲めよ。お前の顔、酷いぞ……」
俺はキョロキョロしつつも、ちゃぶ台の側に腰を下ろして、持参してきたコンビニの袋を泉に手渡した。
泉は、悪いな……と力なく呟いて
「で、谷木さんの様子、どうだ?」
そう言って、俺の正面に座った。
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