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俺は泉が床に置いたその袋から、栄養ドリンクを取り出して、ちゃぶ台の上に置いた。
「うーん。まあ、あの人は今のところは、大人しいよ。
それより、宝田さんの具合、どうだ?」
「随分落ち着いてきたよ。昨日あたりから、ご飯を食べるようになったしな……。
さっき、明子さんが来てくれたんだよ」
泉はため息を吐き出しながら、少しだけ微笑んだ。
それから、ちゃぶ台の上の栄養ドリンクを「いただきます」と律儀に俺に断って飲み干した。
「お前は? ちゃんと食べてんのか?」
「あぁ、私は大丈夫だ。隣の屋敷から強制的に食べ物が運ばれてくるからな……」
照れてるんだか、気まずいんだか、思い出し笑いのような微笑を浮かべている。
「屋敷から? 泉部長か?」
「いや……、兄だ。兄が何かと面倒をみてくれている。正直、助かっている」
「そうか。……お前さぁ、少し休めよ。なっ?」
俺が泉の肩に手をかけると、泉は目元を手で覆った。
「あぁ。さっき明子さんと話をする光さんを見れたし……。
なんだろうな……。お前の顔見たら、急に力が抜けたよ……。
私は……だい、じょうぶ……」
「泉……、少し寝てろよ」
俺は優しくそう言ってやったけど、すでに泉の目は閉じられていたから、聞こえて無かっただろうな。
「さてと……」
俺は立ち上がって、パーテーションの向こうを覗かせてもらった。
そこには、――ベッドの上に座っている宝田さんが、俺に向かって儚く微笑んでいた。
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