★ 説得

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 俺は泉が床に置いたその袋から、栄養ドリンクを取り出して、ちゃぶ台の上に置いた。 「うーん。まあ、あの人は今のところは、大人しいよ。  それより、宝田さんの具合、どうだ?」 「随分落ち着いてきたよ。昨日あたりから、ご飯を食べるようになったしな……。  さっき、明子さんが来てくれたんだよ」  泉はため息を吐き出しながら、少しだけ微笑んだ。  それから、ちゃぶ台の上の栄養ドリンクを「いただきます」と律儀に俺に断って飲み干した。 「お前は? ちゃんと食べてんのか?」 「あぁ、私は大丈夫だ。隣の屋敷から強制的に食べ物が運ばれてくるからな……」  照れてるんだか、気まずいんだか、思い出し笑いのような微笑を浮かべている。 「屋敷から? 泉部長か?」 「いや……、兄だ。兄が何かと面倒をみてくれている。正直、助かっている」 「そうか。……お前さぁ、少し休めよ。なっ?」  俺が泉の肩に手をかけると、泉は目元を手で覆った。 「あぁ。さっき明子さんと話をする光さんを見れたし……。  なんだろうな……。お前の顔見たら、急に力が抜けたよ……。  私は……だい、じょうぶ……」 「泉……、少し寝てろよ」  俺は優しくそう言ってやったけど、すでに泉の目は閉じられていたから、聞こえて無かっただろうな。 「さてと……」  俺は立ち上がって、パーテーションの向こうを覗かせてもらった。  そこには、――ベッドの上に座っている宝田さんが、俺に向かって儚く微笑んでいた。
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