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「こらっ! 泥棒ネコ!
光から掻っ攫った時の、あの勢いはどうしました?
好きで好きで、どうしたって諦められないんでしょ?
手に入れたのに、何が不満ですか?」
子供みたいに唇を噛んで、必死に我慢しているみたい。
「人のものを奪った人ってね、自分も誰かに奪われるんじゃないか、って不安になるらしいですね。それですか?」
追い打ちをかけるようにそう言うと、泣きそうな顔を向けて来た。
「相変わらず、中山さんは厳しいな……。そうだよ。不安だよ。
響はいつも優しいけど、心のどこかで俺は響の一番じゃない、って感じるんだ。
俺を一番に置いてほしいって思うけど、言ったら『一番だよ』って言ってくれるけど……。でも、本当は違うんだ」
「それは、アレですか? 『お前のためなら死ねる』って言って欲しいとか?
もはや『私と仕事どっちが大事なの?』ってやつですか?」
相原先生は目に涙を溜めて、唇を震わせていた。
恋人だからって、いつも天秤が平行とは限らない。
それに、全ての恋人たちが好きだ嫌いだに、命張っているわけでもない。
ロマンチストなのはいいけど、現実はそれほどシンプルなものじゃないでしょう?
恋人がいて、仕事があって、家族がいて。人は色々なものを背負って生きている。
恋人は生活の中のただのワンピースでしかない。
生活すべてが恋人だったら、もはや重くて仕方ない。
あ……。でもそれに限りなく近いバカップルが一番身近にいたわ……。
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