★ 説得

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『まさか、変な薬じゃないですよね?   泉を眠らせて、その間に宝田さんと話をする、っていう策ですか!?』  ”泉を抑える方法”について、俺はやっと理解した。  ったく、谷木さんの考えそうなことだ。 『そっ。泉のやつ、俺からの差し入れじゃ警戒して絶対飲まないだろう?   大丈夫だって! ただの睡眠導入剤だから~! 毒じゃねぇ~よ!   ま、いざとなったら、他にも方法はいくらでも……』 『だぁぁー! もう、わかりましたよっ。  俺からなら飲むでしょうよ。飲ませりゃ、いいんでしょ!   じゃ、行ってきます!』  俺が荒々しく玄関扉を開けると 『あ、そうだ。柏木、中山さんに連絡しておいたから。  お前が行くなら、彼女にも協力してもらった方が良いだろう?   宝田光にも一応話をしているはずだ。後は、うまくやれよ』  そう言って俺の肩を『じゃ、がんばれよ』と優しく外に押し出した。 『……‥…』  エレベーターまで、ポカンとしながら歩く俺。  なに? どっから俺、谷木さんの術中にハマってた?  いくらなんでも、用意良すぎるだろう……!?    なにが『柏木には適わねぇ』だっ!  俺なんか、谷木さんのつま先すら届かねぇじゃねぇかっ。  けど、耳元に残っている。  押しだされる前、小さな声だったけど『お前にしかできない任務だ』って……。  悔しいけど……、谷木さんがお膳立てしてくれたってことは、俺なら『うまくやれる』って思ってくれた、ってことだよな。  それなら期待に応えたいし、誰も傷つけたくない、って思っているのは本当だ。  きっと谷木さんもそれを願っていて、そのうえで、俺にやらせようとしている……    俺は背筋を伸ばした。  谷木さんに振り回されるのも、下僕なのも今始まったわけじゃない。 『柏木陽一! 任務遂行しますっ!』  気合を言葉にして、大きく足を踏みだした。
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