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★★★
「宝田さん、大丈夫?」
ベッドの上の宝田さんは小さく頷いて、俺を見上げた。
宝田さんはもともと可憐な雰囲気があったけど、今はそれに『儚さ』のようなものが追加されたみたいだ。
前よりも危うさというか、頼りなさが増しているように感じる。
『病み上がり』というのを差し引いても、痛々しいくらいに存在感が希薄だった。
「大丈夫です。私よりも泉さんの方がずっと辛そうで……。
全然眠ってくれなくて……。だから……、ありがとうございます」
そう言って、その場でぺこりと頭を下げた。
「明子さんから、何か聞いてる?」
俺も軽く会釈を返して問うと、宝田さんは静かに頷いた。
「明子からは『泉さんの疲労が酷いから、柏木さんが眠らせてくれる』って、聞いています」
それから少しだけ微笑んで、探るような眼差しを向ける。
「でも本当の目的は、ロバート松岡という人が関係するんじゃないか、って……」
「うん。その通りなんだ……」
俺は正直に打ち明けた。
そもそも俺に知的戦略とか無理だ。
全てを話して協力してもらうしかない。
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