★ 説得

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 後ろからやって来た、別の手の平にガシッと握られて、宝田さんに包まれていたはずの俺の拳は、腕ごとガッチリ後ろに回された。 「え!? うわっ!?」  俺が間抜けな声を上げると同時に「お前……光さんに何するつもりだ? あぁ~!?」寝起きのせいか、いつもより10倍増しのドスの利いた声が、耳元から脳天に直撃した。 「ひぃ!? い、いずみ……?」  振り向くと同時に、後ろに回された両手をギリギリと締め付けられた。 「お前今、光さんに触ろうとしただろう? なんだ? この手は? あ”~?」 「いや、こ、これは。――誤解だっ。ね!? 誤解だよね? あれ?」  明子さんも泉兄も後ろを向いている。  泉兄!? 泉のストッパーじゃなかったのか!? 「お兄さん? 出番! 出番! 出番でーす!!」  俺の必死の訴えは、泉兄の背中にあっさり跳ね返されたようだ。 「うわあ~、まて、まて。泉、話せば分かる。  宝田さんの手があんまり気持ち良くって……、いやいや、違うって。  ぎゃー! 痛いって、痛い!  ――ごめんなさい、ごめんなさい、って。うわぁぁぁぁ……」  関節技決められて、もだえ苦しむこと5分あまり。  解放された俺は、心身ともに疲弊していた……。
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