★ 説得

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「泉さん……」  宝田さんが泉の手を握って、泉を振り向かせた。 「私がお願いしたんです。  私が、ロバート松岡に会わせて欲しい、ってお願いしたんです」 「光さん、無理しなくていいから。大丈夫です。光さんは私が」 「泉さん、光の言うことは本当よ」  明子さんがビシッと硬い声色で、割って入った。 「光はね、これ以上、泉さんの側にいても何の解決にもならない、って気付いたの。  逃げているだけじゃ、共倒れになるだけだから。  泉さんは『光を守りたい』って言うけど、それ、本当に光を守っているのかしら?  光を閉じ込めているだけじゃないの?  あなたの自己満足の犠牲に…」 「明子、それは違う!」  思わず、という感じで宝田さんが割って入った。  俺は体を起こして、明子さんと泉を交互に眺めた。  明子さんは目を三角にして泉を睨んでいるのに、その唇は辛そうに歪んでいる。一方泉は、そんな明子さんを黙って見据えつつ、唇を噛みしめてうつむいた。
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