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「泉さん、座ってください」
硬質な宝田さんの声に、人形のように従い宝田さんの前に座る泉。
俺からは泉の背中しか見えないけど、緊張しているのがわかる。
「泉さん、私……」
外野の俺たちは、宝田さんの言葉に耳を傾けた。
宝田さんは、泉を最強の目力で真っすぐ見つめている。
「私は……泉さんに――」
そこまで言ったところで、耳をすませている俺たちの目線に気が付き、宝田さんは火がついたように赤くなった。
ん?
俺はてっきり、さっき俺に言ったことをそのまま泉に伝えるんだと思っていたから、ますます耳をそばだてた。
「――夢を見たんです。目が覚めたら――、それなのに………」
蚊の鳴くような小さな声で、何かを伝えているようだ。
「…………」
泉の背中が固まったまま動かない。
何が、どうしたんだ?
「おい、泉? どうした?」
声をかけたけど、泉はピクリとも動かない。
「光ってね、時々やらかすの、くくくっ」
首をひねる俺の隣で、含み笑いをしながら明子さんは腹を抱えた。
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