★ 俺にできること

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 警察の人間に残業というカテゴリーはない。  もちろん公安4課、資料係も同様だ。  俺はひたすら書類を捌いていた。 「次の一件、これは……っと」  ん? なんだこれ……? 19XX年?  20年前の5月30日。アメリカからのチャーター機【B555】の乗客名簿?  こりゃまた、随分古い資料だなぁ。  そんな昔の資料、まだ残ってんのか?  俺はPCに齧りついて、検索をかけた。 「えっと……」  カーソルを動かし、どんどん年号を下げていく―― 「あぁ……これか?」  19XX年、5月30日。  確かにアメリカ本土から神奈川米軍基地に【B555】のチャーター機が運行されていた。 「え~っと、乗客は……っと。――50人か。名簿は……」  俺は【passenger list: 乗客名簿】という項目をクリックし、一覧表を眺めた。 「よしっ。印刷っと!」  俺の背後にある印刷機が唸り声をあげて、印刷が作動されたことを知らせる。  俺はパソコンをそのままにして立ち上がり、印刷機の方を見た。 「あれ……?」  印刷機の前には、背筋をピンと伸ばした濃紺スーツの後ろ姿が見えた。  手にA4の紙を持っている。 「おい、泉、お前何やってんだ?」  俺は印刷機に向かって歩いた。
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