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「柏木、この書類どこからの依頼だ?」
泉は難しい顔をして、印刷機から排出された乗客名簿を寄越した。
「あー? これか? これは……」
俺はデスクに戻って依頼書を確認した。
「依頼元は外事3課の――主任だな。それがどうかしたのか?」
泉は久しぶりに見る”仕事の顔”になっている。
懐かしく感じる目つきの悪い顔が俺を見据えて、口を開いた。
「柏木、例の計画、潰されそうだ、って?」
「はあ~? なんでだ? 予算オーバーか!?」
「いや、そうじゃなくて。――外事だ」
「外事? 外事って、この外事か?」
俺が書類をピラピラ振ると、泉は眉間に皺を寄せた。
「お前……、谷木さんから何も聞いてないのか?」
また、それか!? こいつまで、それを言うか!?
「もう、いい加減にしてくれ!
俺は一体、何を聞かされてないんだよ?
最初は明子さん、次は泉兄、そして、お前までっ!
どんだけ、俺を追い出す気だ!? あぁー!?」
身を乗り出して捲し立てる俺の勢いに圧倒されたのか、泉は表情を柔らかくして、俺の肩に手を置いた。
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