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「まあ、待て。落ち着けって。
お前……、谷木さんの下、大変だな……」
泉の同情的な眼差しに、俺は一瞬涙ぐみそうになった。
「泉! お前、分かってくれるか!?
そうなんだよっ。
いつも自分勝手でさ! 俺にはなんの説明もなしに動いてさ!」
俺が興奮して愚痴ると、泉は眉毛を下げ、うんうんと相槌を打ってくれた。
「それにさぁ、この間の計画だってさ。
俺がやっと提出した書類持って行ったきり、行方不明だよ?
そんな上司いるか?」
俺はここ何日かで急激に溜まったストレスを、泉にぶつけるがごとく吐き出した。
「もう、我慢しないぞっ。俺は言ってやるね!
谷木さんに、ビシッ! っと言ってやる!」
「へえ~、何を?」
「だから!! 谷木さんのっ! ――へっつ!?」
「何を言うんだ? 柏木? 言っちゃえよぉ。ビシッ! っと。
今、ここでさぁ?」
「ひっいぃぃぃ!!」
泉の肩越しに、指をポキポキ鳴らしながら、ゆっくり歩いてくる谷木さんが見えた。
「お前さぁ~。――お約束すぎ……」
おでこに手を当て、悲壮感丸出しで泉が呟いたらしいけど……、俺の耳には全く入らなかった。
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